生薬辞典

阿膠(あきょう)

いわゆるニカワ。牛や馬の皮や骨からとる。代表的な補血止血薬。貧血および、すべての出血疾患に用いるほか強壮効用がある。

茵蔯蒿(いんちんこう)

カワラヨモギの果穂、またはその若い茎や葉。日本各地の河川や海浜の砂地に自生する。成分は精油の中にあり、クロモン類・クマリン類・フラボノイドなどに殺菌・胆汁分泌作用があって、黄疸治療によく用いられる。

香(ういきょう)

セリ科のウイキョウの果実。長野・岩手・山梨県などで栽培されている。健胃、消化、鎮痛、鎮痙などの効があり、安中散の主薬。

延胡索(えんごさく)

ケシ科の植物の塊茎。成分はアルカロイドなど。胃液分泌抑制、抗潰瘍、鎮痙などの効がある。

黄耆(おうぎ)

中国原産のカラオウギの根。わが国では採れない。代表的な補気薬。マクロファージ産生促進、血圧降下、利尿、抗炎症、強壮の効が知られている。

黄芩(おうごん)

シソ科のコガネバナの根。これも中国産で、わが国ではほとんど採れない。豊富に含まれたフラボノイド類は消炎・解熱・充血をとる効があり、食欲不振・腹痛・下痢止めなどにも用いる。

黄柏(おうばく)

キハダの樹皮。土用ごろに採取し、皮をはいでコルク層を取り除いたもの。下半身の熱証に用いられ、健胃・消炎・下痢止めの効がある。

黄連(おうれん)

キンポウゲ科オウレンの根。消炎性の苦味健胃剤として用いられることが多い。

 

葛根(かっこん)

マメ科の植物クズ(葛)の根である。秋に採ってよく洗ったものを、表面のコルク皮を取り去り、細かく刻んで乾燥させる。  クズは山間部の野に群生し和歌山県の吉野や信州などが産地として有名。発汗・解熱の効があり、筋肉のこりをほぐす力ももっている。葛根湯をはじめ、応用範囲が広い。

滑石(かっせき)

天然鉱石の滑石または陶土。中国からの輸入ものを使うが、その成分は日本薬局方のタルク。利尿清熱薬で消炎・利尿の効がある。

乾姜(かんきょう)

生姜をむして干燥したもの。漢方では広く使用される生薬で、熱性鎮痛剤として、冷え・嘔吐・せき・めまい・腹痛などに効果がある。

甘草(かんぞう)

中国産マメ科のカンゾウの根。甘味質のグリチルリチンと苦味質のグリチラコリンを含み、解毒作用のほかに、痛み・せきなどの急激症状にも効がある。漢方では最も多く使われる生薬である。のどの痛みに用いる甘草湯は、漢方には珍しく単味処方である。

桔梗(ききょう)

キキョウの根。鎮咳、去痰の効があるが、とくに甘草と配合されると効果が強まる。

枳実(きじつ)

ダイダイのまだ青い実。芳香健胃剤。腹部の膨満感・便秘・もたれ・食欲不振・腹痛に広く用いられる。

菊花(きっか)

食用にするリョウリギクの花。秋に開花したものを採り、日干しにする。補血、鎮静の作用がある。

橘皮(きっぴ)

ミカンの皮。陳皮を参照。

杏仁(きょうにん)

アンズの種子の中の仁である。鎮咳去痰薬に用いられるが、腸を潤す効もある。

荊芥(けいがい)

シソ科のアリタソウの果穂。温性の解表薬。発汗・解毒の作用があり、初期の感冒のほか、湿疹やかゆみの改善に使用される。

桂皮(けいひ)

クスノキ科カツラの若枝。いわゆるニッケイの類である。その効用の幅は広く、温性解表薬として発汗・解熱・健胃・整腸のほか、頭痛・腹痛などの痛みをとり、気血をめぐらせるとして、漢方ではよく使われる。

香附子(こうぶし)

カヤツリグサ科のハマスゲの根茎。行気通経剤として用いられ、生理不順・血の道症に効果。

粳米(こうべい)

玄米のこと。収穫後一年を経過したものがよいといわれる。胃腸に良く、気力を高める効がある。

厚朴(こうぼく)

本来は中国産だが、わが国ではホオノキ(朴)の樹皮で代用する。気のめぐりをよくし、筋肉のけいれん・強直を治すので、健胃整腸剤としても用いられる。

呉茱萸(ごしゅゆ)

ミカン科の植物ゴジュユの果実。鎮痛・血流促進作用があり、冷え症用薬に用いられる。

五味子(ごみし)

サネカズラの一種のチョウセンゴミシの果実。せき止め、去痰、抗炎症の効果をもつ。また滋養強壮の効果があることから体力低下にも。

 

柴胡(さいこ)

セリ科のミシマサイコの根。中国では河北、遼寧などの各省で産出。国産では静岡県天城山あたりで産するものが最上品とされる。漢方では最も重要な解表理気薬のひとつで、消炎・解熱・鎮静・鎮痛などの作用をもち、胸脇苦満に使用される。

細辛(さいしん)

山地の陰湿地に自生するウスバサイシンの根。温裏薬。せき止め・鎮痛・解熱・去痰の効があり、抗炎症作用もある。

山茱萸(さんしゅゆ)

サワグミの実。種子をとって果肉を用いる。滋養強壮の効がある。

山椒(さんしょう)

蜀椒、川椒ともいうが、サンショウの果殻である。整腸、健胃作用があり、回虫を駆除する。

サンシシ

クチナシの果実で、飲食物の黄色着色料としても飛鳥時代から使用されている。消炎、排膿、胆汁分泌などの効がある。

酸棗仁(さんそうにん)

サネブトナツメの種子。含有するジュジュポサイドは神経の安定剤で、心因性の不眠や寝汗を治す効がある。

山薬(さんやく)

ナガイモ、ヤマノイモ、あるいはジネンジョのこと。滋養強壮剤である。

地黄(じおう)

ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根茎。ステロール、マンニトール、レーマノサイドA・Bなどを含む強壮剤であるが、血糖降下、利尿効果ももつ。

紫根(しこん)

ムラサキの根。古くは重要な染料であった。浮腫抑制、抗炎症、創傷治癒促進作用がある。

芍薬(しゃくやく)

観賞用のシャクヤクの根である。筋肉の緊張をゆるめ、痛みを止め、血のめぐりをよくするところから、漢方では重要な薬物とされ、多くの処方に配合されている。

車前子(しゃぜんし)

オオバコの種子。利水清熱薬。むくみ、尿量減少、下痢、膀胱炎などに広く使われ、眼球充血、かすみ目などにも用いられる。

縮砂(しゅくしゃ)

東南アジア産のショウガ科シャクシャの果実。芳香性の健胃剤で、食欲不振・腹痛・下痢などに用いる。

生姜(しょうきょう)

食用のヒネショウガのこと。表寒証を治療し、胃腸を暖め、その働きをととのえる芳香性の健胃剤。食欲不振・嘔吐・むかつきなどをおさめる効があり、消化吸収も助ける。からだをあたためる効果は乾姜のほうが強いが、これ自体も応用範囲が広い。

升麻(しょうま)

キンポウゲ科のサラシナショウマの根茎。タンニン酸などを含む清熱解表薬で抗炎症、解熱の効があり痔疾用薬にも使用する。

石膏(せっこう)

天然の軟石膏で、含水硫酸カルシウムを含んでいる。のどの渇きを治し、熱を下げ、興奮を静める。白虎ともいう。

川芎(せんきゅう)

セリ科のセンキュウの根。からだをあたため、血をめぐらす活血・利気剤。婦人の病気によく使われる。

蒼朮(そうじゅつ)

オケラの中でも中国産のものをいい、油分に富み、独特な芳香がある。水分代謝に異常が認められる場合などに用いられる。厳密には、朮と区別される。

 

大黄(だいおう)

中国産のタデ科植物の根茎。含有するセンノサイドなどは消炎・健胃の効があるが、最も知られる効能は下剤としてである。実証に用いる生薬である。

大棗(たいそう)

ナツメの実。強壮・健胃の効のほかに、急迫性のひきつけや過敏症をやわらげる作用があり、漢方ではよく使用される生薬のひとつである。

沢瀉(たくしゃ)

サジオモダカの塊茎。口渇を止め、利尿の効があり、めまいにも効く。

釣藤鈎(ちょうとうこう)

カギカズラのとげの一種。鎮静やけいれんを治める作用があり、頭痛・めまいによく用いられる。

猪苓(ちょれい)

サルノコシカケ科のチョレイの菌体。北海道や信州に野生する。解熱作用をかねた利尿剤で、口渇を止め、鎮静効果もある。

陳皮(ちんぴ)

熟したミカンの皮。「陳」というのは古いという意味で、「若いミカンの皮=橘皮」とは区別される。フラボノイド配糖体、芳香族アミンに健胃・せき止め・去痰の効がある。

当帰(とうき)

セリ科のトウキの根。北海道や福島・奈良県で栽培されている。プチルフタライド類、クマリン類ポリアセチレン類が含まれ、からだをあたため、血を増し、血の滞りを去り、強壮・鎮痛・鎮静の効果がある。広く婦人の病気、妊娠の諸症状のために用いられる。

桃仁(とうにん)

くだもののモモの種子を割って仁をとりだしたもの。生薬として用いるものは、大半が中国からの輸入品である。アミグダリンなどを含み、浄血作用で知られ、鎮痛・消炎の効もある。

杜仲(とちゅう)

中国産トチュウの樹皮。強壮・鎮痛・鎮静の効がある。

 

人参(にんじん)

食用のものではなく、俗にチョウセンニンジンとよばれるウコギ科のオタネニンジンのことである。むろん、根を用いる。ジンノサイドと呼ばれる13種の複雑な混合成分を含有し、強壮剤・健胃剤として有名だが、新陳代謝促進作用もあり、疲労回復、気力充実に広く用いられる。

 

麦門冬(ばくもんどう)

ユリ科のジャノヒゲの根。サポニン、フラボノイド類に滋養強壮の効があり炎症を防ぎ、せきをしずめる。

薄荷(はっか)

シソ科のハッカの葉で、薬用としてはわが国の特産。健胃作用があるが、精神神経用薬、消炎排膿薬にも用いられる。

半夏(はんげ)

サトイモ科のカラスビシャクの球茎。吐き気を治し、せきを止め、たんを去り、胃のつかえを去るのに有効。漢方生薬としての応用も広い。

白芷(びゃくし)

セリ科のヨロイグサの根。鎮痛・鎮静剤であるが、去痰作用もある。

白朮(びゃくじゅつ)

オケラの若根のコルク皮をはいだものをいい、朮の中でもいちばん使用頻度が高い。代表的な補気健脾薬。食欲不振、下痢、むくみ、もたれなどに広く使われる。

茯苓(ぶくりょう)

サルノコシカケ科マッホドの球形の菌体。鎮静・利尿に有効で、胃内停水・心悸亢進・筋肉のけいれん・めまいなどにも用いられるため、漢方には欠かせない生薬。

附子(ぶし)

山野に自生するトリカブトの塊根。新陳代謝促進剤・鎮痛剤・保温剤・利尿剤など漢方では、寒を去り、四股の痛みを止める生薬として応用範囲は広いが、その成分アコニチンは呼吸マヒを起こす猛毒である。しかも毒成分の定量を簡単に行えないので、最近まで局方品に入っていなかったほどだ。ただし、今日では成分はそのままで、毒性だけをぬいた「加工ブシ末」が開発され、安心して使えるようになった。

防已(ぼうい)

一般に漢防已とよばれているオオツヅラフジの根、または木部。利尿・鎮痛の効があり、むくみの出る病気に広く使われる。

芒硝(ぼうしょう)

本来は中国原産の天然塩類だが、その成分は硫酸マグネシウムなので、化学製品を使用する。塩類下剤である。

防風(ぼうふう)

セリ科のボウフウの根。海岸地帯のものより山野に自生するもののほうが良質。風(病邪)を防ぐという名どおり発汗・解熱・解毒の効がある。

牡丹皮(ぼたんぴ)

観賞用のボタンの根の皮。エタノールエキスに抗アレルギー作用があり、消炎・鎮痛の効のほかに、血の滞りを治す働きがある。漢方では婦人病薬として芍薬と並んで繁用される。

牡蛎(ぼれい)

カキの貝殻のこと。成分は炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸塩および微量の高タンパクで、鎮静の効があり、胃酸の中和・寝汗・心悸亢進などに使われる。

 

麻黄(まおう)

マオウの地上茎。主成分がエフェドリンのため、現代医学でもぜんそく薬として気管支平滑筋を弛緩し、痙れんを静めるのに使用する。発汗・利尿・せき止め・去痰などの作用は、漢方においても熱性病治療のために重要な生薬である。

麻子仁(ましにん)

大麻仁ともいう。クワ科のアサの種子。からだにうるおいをつけ、きわめて緩和な下剤である。

木香(もっこう)

インド産あるいは中国雲南省産モッコウの根。健胃整腸剤で、芳香がある精油は、腸内細菌などに対する抗菌作用が認められている。また、腸内のガスを去る効をもつ。

 

薏苡仁(よくいにん)

ハトムギの種子で、種皮をとって用いる。抗炎症・抗腫瘍・血糖値降下などの作用が認められ、浮腫、脚気、腎・膀胱結石、神経痛、せきに広く応用される。イボとりでも知られる。

 

竜骨(りゅうこつ)

古代の大型哺乳動物の骨の化石。もっぱら中国の山西、四川、雲南、貴州からの輸入品にたよっている。燐酸カルシウム、炭酸カルシウムや微量の鉄、塩素、硫酸イオンなどを含有している。牡蛎とともに精神神経用薬の代表。神経過敏や心悸亢進に用いる。

竜胆(りゅうたん)

リンドウの根である。中国東北部が産地。独自の苦味成分は、ゲンチアナやセンブリに通じるもので、健胃・消炎の効があり、漢方では肝臓疾患によく使われる。

良姜(りょうきょう)

中国産のショウガ科コウリョウキョウの根。辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用・中枢神経系を介する胃運動神経抑制作用などが認められている。芳香性健胃剤として使われる。

連翹(れんぎょう)

中国産モクセイ科レンギョウの果実。風熱を散じ、結熱を除く生薬。解毒・消炎・排膿の効があり、もっぱら化膿性皮膚病の内服薬として使われる。